空気を読みすぎて疲れてしまい、人と器用につき合うことができない、アスペルガー症候群(アスペ)の、まあちゃん。理解があるような顔で、内心悶々としたものをかかえる、映画監督のわたし。些細なことで、ふたりの仲がギクシャクするたび、これって、彼女がアスペだから? それとも、わたし自身の問題なの? わかり合おうとしなくちゃ… いい人でいなくちゃ…ああ、でも! まあちゃんと友達でいるために、わたしは自分たちに向けてカメラを回しはじめた…はずが、たどりついた答えは、友達やめた?!


コミュニケーションの壁に苦しむ自身の姿を、エイヤ!と晒した『Start Line』から4年、生まれつき耳のきこえない映画監督 今村彩子が、新たな葛藤と向きあう。人と人ってほんとうに分かりあえるの? 友達って何? 普通ってどういうこと? わたしたちを縛るやっかいな“常識”を捨て、もっと自由に軽やかに、心と心を重ねあう。ヒリヒリして、イラッときて・・・でも何だかほっこりする、まあちゃんとわたし、ふたりの“違い”から生まれたものがたり。

監督・撮影・編集 今村彩子

これまで私は「耳がきこえない」という少数派として、物事を捉え考えて生きてきた。
でも、アスペルガー症候群のまあちゃんから見ると
私は「一般の脳みそ」を持った人間、多数派となる。
私は“多数派”に立った経験がほとんどない。
まあちゃんと親しくなるにつれ、行動で戸惑うことも出てきた。
その度、私は悩み、葛藤するようになった。
そこで、私はまあちゃんを「撮る」ことにした。
どうしたらまあちゃんと仲良くやっていけるのかを考えるために。
撮ったものを画面で見て、更に編集することで客観的に見つめられると思ったのだ。
「友達やめた。」は、こうして生まれた。

「いい○○(友達、家族、パートナー etc…)でありたい」と考える人は多いと思う。
でも、自分の役割を果たさなければと、頑張りすぎてはいないだろうか。
実際、私は「いい友達でいなきゃ」と、たくさんのことを飲み込み、我慢を続けて爆発した…。

この映画が「○○でなければいけない」と自分で自分を縛り付けていた縄をほどき、
あなたが気にかけているあの人との人間関係を見直すきっかけになったら、
こんなに嬉しいことはない。
今村彩子(いまむら・あやこ)

1979年生まれ。大学在籍中に米国に留学し、映画制作を学ぶ。劇場公開作品に『珈琲とエンピツ』(2011)『架け橋 きこえなかった3.11』(2013)、自転車ロードムービー『Start Line(スタートライン)』(2016)がある。また、映像教材として、ろうLGBTを取材した『11歳の君へ ~いろんなカタチの好き~』(2018/DVD/文科省選定作品)や、『手話と字幕で分かるHIV/エイズ予防啓発動画』(2018/無料公開中)などをも手がける。初めての著書となる「スタートラインに続く日々」(2019/桜山社)には、本作の原作とも言える「アスペのまあちゃん」が収録されている。現在、『架け橋 きこえなかったあの日』を制作中。

構成:山田進一
整音:澤田弘基 / 音響効果:野田香純
音楽:やとみまたはち / ギター:鈴木裕輔 / ピアノ:奥村真名美
CG:瀧下智也 / イラスト:小笠原円
文字起こし:野村和代、江川美香 / 手話通訳:北村奈緒子
英語翻訳:William J.Herlofsky / 翻訳協力:河合世里子

自分とは異なるバックグラウンドを持つ人たち同士が
どうすればうまく共存できるのか、という本質的な問題について、
理想論だけではない感情の部分まで示している
それは、簡単に答えが出るものではないかもしれないが、とても大切な問題だ。


本田秀夫(精神科医)

構図としては、“まともな”今村監督が
“ちょっとおかしな”まあちゃんを撮っているはずなのだけど、観ていると、
わっどうしよう私まあちゃんの気持ちのほうがわかってしまうぞ?と慌ててしまった。
人によっては、きっといろんな部分で価値観が逆転してこんがらがる作品
何がマイノリティで何がマジョリティか、それは常に流動的だ――と、
そんな問題意識を孕んだ映画であると同時に、
中年独身女性(あえてこう言います)の柔らかい友情の話でもある。
扉を開けてまあちゃんを迎えるシーンが何度もあるけれど、毎回うれしくなる。


能町みね子(文筆家)

発達障害を持つ友人が私に話してくれる「生き苦しさ」。
頭ではなんとなく分かるけどハッキリとは分からなかった。
映画の中の二人の対話を聞いていたら、それが肌でわかる感覚が私の体に訪れた。
言葉で説明しづらい何かは、
言葉で表現しきれない何かによって伝えることができる
それが分かって、人間同士の不思議さ愛おしさで胸がいっぱいになり、
たくさん涙が出ました


田房永子(漫画家)

なんだか物騒なタイトルだなぁ。それが第一印象でした。
しかし作品を観てみると……なるほど、そうか。いいよね、友達やめたって。
本当は、友達やめたくなるくらい人と向き合うのって、難しいし怖いし面倒くさい
でもそうするだけの価値が「友達」にはあるんじゃない?
改めてそう感じさせてくれたお二人に、ちょっと感謝したくなりました。


北川恵海(作家)

人が、自らに巣食うカテゴリー思考や偏見から抜け出すためには、
そのカテゴリーに属する多くの人々に出会う必要がある。
それを知らない者たちが辿る足掻きを、
本作品は目を背けたくなるほど誠実に切り取ろうとしている


綾屋紗月(自閉スペクトラム・手話ユーザー/東京大学先端科学技術研究センター)

我が家も毎日がプチ「夫婦やめた」状態だ。
でも、お互いを必要とする気持ちと信頼が、「言葉」を超越したコミュニケーションを育んできたと思う。
「コミュニケーションとはなにか?」と考えるとき、本作から得られるヒントは多いはずだ


くらげ(「ボクの彼女は発達障害」著者)

恋人同士であれば、欲しい愛と与えられる愛の形が違えば別れてしまうだろう。
では、友達同士で欲しい友情と与えられる友情の形が違う時は?
悩み、苛立ち、時には「友達やめた」と言いつつも、
作品に昇華させた監督の執念は見事
気の合う友達が欲しいと思っている人には特に見てほしい。出来れば2度。


寺島ヒロ(漫画家/「うちのでこぼこ兄妹」著者)

自分を変えるではなく、相手を変えるではなく、
相手を支えるではなく、支えてもらうではなく、一緒にいようと試みるとき、
アスペルガーの人にとって一番苦手なはずの同じものを見つめる・共同注意が、
うっかり生まれていることに出会って心動かされることがあります。
この映画にはたくさんのそれが見つかりました。


滝口のぞみ(臨床心理士)

分かり合えなさをそのままにせず、かといって完全に分かり合えることを目標ともせず、
お互いの困りごとを一緒に眺め、それはどんなときに起こるのか、何がそうさせるのか、
今村監督とまあちゃんのやりとりは当事者研究の対話そのものだと感じた。

「分かり合う」とは到達するものではなく、変化し続けるプロセスそのものである


松森果林(ユニバーサルデザインアドバイザー)

遠い他人は許せても、近い他人は許せない
近くなるほど、互いの“ものさし”の違いがよくわかる。
怒っても注意しても無視しても、既に出来上がっているものさしは変わらない。
さあ、どうする?ずばり、あきらめる!自分のものさしを相手に当てることを。
そして、まあちゃんとあやちゃんはふたりのものさしを作り始めるのだ。
人と関わるって、新しいものさしを作り続けていくことじゃないか。
一番面倒で忍耐のいるこの作業に、泣けてくるほどまっすぐ不器用に向き合うふたり。
あきらめという名の愛の物語


纐纈あや(映画監督)

「このままでは、まあちゃんを撮ってるのではなく、
アスペを撮ってることになってしまう…」
と今村さんが呟くシーンがある。その通りだなあ、と思う。
「アスペルガー」を撮り、「うつ」を撮り、「ろう」を撮ることに
終始しているだけのドキュメンタリーが、なんと多いことか、
そのことがわかりやすく描かれていれば良し、とするモノの見方…思考停止。
そこに、一人のヒトが生きていることを撮ることこそが、ドキュメンタリーの魅力なのにね。
人間は宇宙同様に、深いのだ。映画もね


伊勢真一(映画監督)


『友達やめた。』は全編字幕付きとなります。
    
地域劇場名お問い合わせ公開日備考
東京都K’s cinema03-3352-2471終了しました◎9/19(土)
今村彩子監督による初日舞台挨拶あり
【上映時間】10:00〜
神奈川県川崎市アートセンター044-955-0107終了しました【上映時間】10:00〜
◎11/8(日)、11(水)
フレンドリー上映実施
◎11/8(日)
今村彩子監督による舞台挨拶あり
※11/9(月)休館
※フレンドリー上映…聴覚過敏、視覚過敏の方のために通常の上映より音響を抑え、照明を明るくして上映します。
神奈川県横浜シネマ・ジャック&ベティ045-243-9800終了しました◎12/ 19(土)
井戸大輔さん(港南台ひの特別支援学校校長)と今村彩子監督によるトークイベントあり
◎12/19(土)・22(火)はフレンドリー上映実施
※フレンドリー上映…聴覚過敏、視覚過敏の方のために通常の上映より音響を抑え、照明を明るくして上映します。
神奈川県シネコヤ0466-33-5393終了しました
北海道シアターキノ011-231-9355終了しました「KINOフライデーシネマ」内での上映
上映後、今村彩子監督と二通諭さん(札幌学院大学名誉教授)によるトークイベントあり
宮城県チネ・ラヴィータ022-299-5555終了しました<今村彩子監督特集開催!>
3/26(金)〜4/8(木)「きこえなかったあの日」
3/26(金)〜4/1(木)「Start Line」
◎3/27㊏上映後
今村彩子監督と小泉正壽さん(宮城県聴覚障害者協会会長・出演者)、菊地信子さん(出演者)による舞台挨拶
群馬県前橋シネマハウス027-212-9127終了しました【上映時間】
①10:20〜/②13:30〜
◎11/22(日)
①10:20の回終了後、今村彩子監督による舞台挨拶、
②13:30の回終了後、原真理子さん(群馬子どもサポート だるまの会 代表)と今村監督によるトークイベントあり
◎11/22(日)
今村彩子監督による舞台挨拶あり
埼玉県川越スカラ座049-223-0733終了しました◎5/15(土)上映後
今村彩子監督と村上由美さん(言語聴覚士)によるトークイベントあり
石川県シネモンド076-220-5007終了しました◎3/20(土)
今村彩子監督の初日舞台挨拶あり
長野県松本CINEMAセレクト0263-98-4928終了しました【上映時間】13:30〜
【会場】まつもと市民芸術館 小ホ-ル
◎本田秀夫先生(精神科医)と今村彩子監督によるトークイベントあり
長野県長野ロキシー026-232-3016終了しました【上映時間】10:30〜
◎12/5(土)
今村彩子監督による初日舞台挨拶あり
愛知県シネマスコーレ052-452-6036終了しました◎9/26(土)、27(日)、10/3(土)、4(日)
今村彩子監督による舞台挨拶あり
【上映時間】
・9/26〜10/2
 10:40〜
・10/3〜9
 12:35〜
・10/10〜16
 16:25〜
三重県伊勢進富座0596-28-2875終了しました◎12/12(土)
今村彩子監督による舞台挨拶あり
京都府京都シネマ075-353-4723終了しました【上映時間】
11/13(金)〜19(木)9:30〜
11/20(金)〜26(木)9:35〜
◎11/14(土)
今村彩子監督による舞台挨拶あり
大阪府第七藝術劇場06-6302-2073終了しました【上映時間】
11/14(土)〜19(木)12:20〜
20(金)11:00〜
11/21(土)〜27(金)10:00〜
◎11/15(日)
石橋尋志さん(「さかいハッタツ友の会」主宰)、今村彩子監督によるトークショーあり
兵庫県元町映画館078-366-2636終了しました【上映時間】
2/13(土)10:00〜
2/14(日)〜2/19(金)10:30〜
2/20(土)〜2/26(金)17:10〜
◎2/13(土)
今村彩子監督による舞台挨拶あり
※緊急事態宣言を受け、リモート出演になります
広島県横川シネマ082-231-1001終了しました◎12/6(日)
釘屋毅久さん(クローバーの会 発達障がい児を持つ親の会 代表理事代行)と今村彩子監督によるトークイベントあり
広島県シネマ尾道0848-24-8222終了しました【上映時間】9:00〜
◎12/6(日)
今村彩子監督による舞台挨拶あり
山口県萩ツインシネマ0838-21-5510終了しました<今村彩子監督特集上映!>
8/21(土)〜9/3(金)「きこえなかったあの日」
9/4(土)~17(金)「Start Line」
福岡県KBCシネマ092-751-4268終了しました“ONE SHOT CINEMA”内での上映
◎今村彩子監督による舞台挨拶あり
佐賀県シアターシエマ0952-27-5116終了しました【上映時間】
1/29(金)~2/4(木)9:00~/14:00~
2/5(金)~2/11(木)
※調整中
◎1/30(土)
今村彩子監督による舞台挨拶あり
※緊急事態宣言を受け、リモート出演になります
鹿児島県ガーデンズシネマ099-222-8746終了しました◎8/21(土)上映後
今村彩子監督と梶原未廣さん(志學館教諭)によるトークイベントあり
沖縄県シアタードーナツ070-5401-1072終了しました◎10/25(日)
今村監督による舞台挨拶あり
【上映時間】
10/22(木)〜11/11(水)15:20〜
※10/25(日)のみ19:00〜の回あり
※10/25(日)は15:20〜/19:00〜ともに事前予約可
11/12(木)〜12/2(水)11:00〜