コミュニケーションは、言葉だけではない。
 
途中で旅が終わってしまうのではと思われるような場面も何度もありました。
コミュニケーションの定義が「心の中の感情まで共有する関係構築すること」であれば、
哲さんとのコミュニケーションは最初の課題でしたね。
それでも徐々に理解しあいながら旅を続け、
多くの人との出会いが最後まで今村さんを悩ませましたが、
私はこれが現実なのだと妙に納得しました。
出会ったすべての人と心の中まで理解し合えることはできないと思います。
ところで、映画を観ている自分の顔が、困った顔、つらそうな顔、微笑んだ顔…に
なっていることに自分自身で気づきました。
それだけ私もこの映画の中に入り込んでいたのです。
 
真崎 文明 氏  Fumiaki Masaki    株式会社モンベル代表取締役社長 
 


怒り、不安、希望…自分自身が映し出される映画
 
はっきり言おう。この映画を観る時は覚悟した方が良い。
1度観たら3回は観たくなるからだ。
自分自身の心のありようがこれほどそのまま感想につながる映画は今まで観たことがない。
1回目は腹がたった。
数分おきに画面につっこみを入れてしまう。これは何だろう。自分に対しての苛立ちか。
2回目は不安になった。
しばらく眠れなくて悶々する。これは何だろう。世の中の全ての人間に恐怖を感じる自分がいる。
3回目は人が恋しくなった。
一緒に語り合って共感したくなった。これは何だろう。自分の中に希望を見つけたのか。
そして4回目は、観るよりも先に旅に出たくなる。
自分自身が主役の人生の旅路。それがこの映画の全てだ。
 
早瀨 憲太郎 氏  Kentoro Hayase    映画監督
2017/1/14(土)イベント登壇決定!@横浜シネマ・ジャック&ベティ
 


様々な「私」との対話の旅が、愚直に自己を更新していく。 
 
映画を見た瞬間、これは映画監督の今村さんの「自己更新の物語」だと感じた。
登場人物の今村さんの自己世界に、様々な「私」が登場している。
音声で話すことを教えてくれた母の娘としての「私」、
手話の会話空間で安住できる「私」、そして、音声の会話空間で理由なく突然排除され、
傷負いている閉鎖的な「私」など。
それぞれが顔を出して内なる「声」を発している。
様々な「私」が、お互いに対抗したり否認したり、疑問を発したり屈したりしている。
様々な「私」の存在を認めながらも、
お互いの関係をどのような「声」でつなげたらいいのだろうか。
それができたら心から納得して安心できるかもしれないのに―。
そんなふうに苦悩する今村さんの自己世界に、
哲さん、ウィルさん、様々な人の「声」が優しく、
時には厳しく染み入る。
これらの「声」に支えられて「私」同士の対話的関係を築いてみる。
様々な「私」との対話の旅を、素敵な伴走者や案内者たちと自転車で駆けぬけて、
愚直に自己を更新していく。
映画という表現手段を持ちえた今村さんだからこそ映画で自己を語り直し、
更新する作業を始めたのだろう。
さて映画を見終えた今、
今村さんはこれからどのような「声」でつないでいくのだろうと
早速思いを馳せている。
 
松﨑 丈 氏  Joe Matsuzaki   宮城教育大学准教授
2016/10/29(土)イベント登壇決定!@桜井薬局セントラルホール(仙台)
 


二人の姿は、前輪と後輪のように見えた。 
 
自転車の前輪は方向を決め、速度を調整し、止まる決断をする。
後輪は前に進む原動力や推進力になる。旅のきっかけは母の死。
聞こえない娘に、社会で人とつながっていくためあらゆることを教えた存在は、
彩子さんにとって前輪であったのかもしれない。彼女はペダルをこぎ出す。
前輪と後輪は入れ替わり、響き合い、旅での出会いは300人を超えたとか。
しかし私は、哲さんとの出会いが何よりも奇跡的だったと感じる。
「旅であったことを隠して映画を作るのは、協力してくれた方々に失礼だから」と
「できない自分」を全部出す。
そこに脚色も偽りもない。彼女の誠実さが伝わる。だから見ていて清々しい風が吹く。
 
松森 果林 氏  Karin Matsumori   ユニバーサルデザインアドバイザー
2016/9/4(日)劇場イベント登壇決定!
 


ためらわずに踏み出す大切さを教えてくれる112分の旅。
 
旅のパートナーである哲さんのカメラは、美しい景色や観光地を追うのではない。
耳が不自由であるがゆえに、コミュニケーションに対して臆病になっている今村監督の、
ナマの姿をスクリーンにさらしていく。哲さんとの対立、
自分にとって心地よい聴覚障がい者同士のコミュニケーションに流れてしまう弱さ、
そしてこの旅でいったい何が得られるのかという無力感。
それらが画面からじわじわと伝わってくる。57日間の旅が、彼女を変えた。
ためらわずに思い切って踏み出すことで、得られるものがきっとある。
その「スタートライン」には誰でも立てる。この映画はそれを教えられる112分の旅だ。
 
岩田 淳雄 氏 Atsuo Iwata    雑誌編集長
2016/9/11(日)劇場イベント登壇決定!
 


覚悟を決めた監督の姿に目を離せないでいた。
 
これだけ監督自らの後ろ姿が延々と映し出される作品は、そうないだろう。
それでも112分見飽きることがないのは、丹念に撮影された349時間31分という
膨大な映像をまとめあげた構成、編集の力量もさることながら、彼女の背中から、
何かをつかみたい、乗り越えたい、答えを見いだしたいというやむにやまれぬ思いと、
覚悟を決めた者の〝執念〟のようなものに、目が離せなくなるからだ。
監督の当初の目的は、旅で出会う人々といかにコミュニケーションをとるか
だったと思うが、哲さんの前で自分をさらけだし、
思いをぶつけ、ケンカし、怒り、泣きながらも関わり続けたこの関係性そのものが、
既に彼女の旅の目的達成になっていたのではないかと思う。
 
纐纈 あや 氏 Aya Hanabusa   映画監督
2016/9/12(月)劇場イベント登壇決定!
 


スタートラインは常に目の前に現れるこの道のなかにある。
 
彩子さんが泣いているとき、私もいっしょに泣いていました。
彩子さんがテツさんに怒られているとき、私もいっしょに怒られていました。
彩子さんがウィルに感心しているとき、私もいっしょに感心していました。
彩子さん、スタートラインは、限定された場所や時間ではなく、
常に目の前に現れるこの道のなかにあるのですね。
あなたも、テツさんもウィルもステキ過ぎ。
世界中の人に観てもらいたい最高に輝いている映画です。
 
ドリアン助川 氏 DorianSukegawa 作家
2016/9/26(月)劇場イベント登壇決定!
 


「あんたがダメなのは障害があるからじゃない」
 
と健常者の堀田さんは何度も言う。
しかし、その正論は本当に正論なのか。
健常者と障害者、正論と異論。
その境界はどこにあるのか。
この映画は図らずもそこに触れようとしている。
だから、この映画を障害者が撮った映画だと 
下駄をはかせて観たら足元をすくわれる。
 
井上 淳一 氏 Junichi Inoue 脚本家・映画監督
 


「自分を好きになれない」人の、生き直しへのチャレンジ。
 
ロードムービーのスタイルをしたセルフヒーリングというか、
まるでユニークな公開カウンセリングだ。
怒ったり、泣いたり、悩んだり、笑いながら、自分を認めていく。
観終わったら、また最初から観たくなった。
 
東 ちづる 氏 Chiduru Azuma 女優・一般社団法人Get in touch代表
 


俺自身にツッコミを入れてくれたロードムービー。
 
勝手に物事のゴールラインを切ったんだ!と自己完結し、
慢心な甘ちゃんな日常を過ごしていたオレ。
「な〜に吐かしてんだ、全くスタートラインにも立ってねぇだろ!」
って俺自身にツッコミを入れてくれたロードムービーです。
 
玉袋 筋太郎 氏 Sujitaro Tamabukuro 浅草キッド/漫才師
 


後悔を残すからこそ、また次の挑戦が始まる。
 
哲さんと日々ぶつかりあう、むき出しの感情。
「聴こえないことを言い訳にしない」と檄が飛ぶ。
彗星のように現れたウィルがくれた、優しい気づき。
自ら人に手を差し伸べにいく、彼の背中は言葉以上に何かを語る。
偶然の巡り合わせで出会い、思わぬ化学反応が起きていく。
旅の醍醐味がここに詰まっている。
 
「何も達成できてない」と監督は最後まで葛藤する。
きっとそれでいい。後悔を残すからこそ、また次の挑戦が始まる。
この旅の終わりこそが、彼女の新たな“スタートライン”ならば、
未来の作品も益々、楽しみになる。
 
安田 菜津紀 氏 Natsuki Yasuda フォトジャーナリスト
 


これは究極のリアル人間ドラマです。
 
ずっと一緒にいるから腹がたつ、心が通ってるから嫌な事言ってしまう!!
「そんな言い方せんでもえーやん」
「そんなん言うたらケンカになるに決まってるやん!!」
「もぅーーー」とか、「仲直りして!!」「あー良かった!!」
と、いつの間にか身内目線になり仲裁に入りたくなるくらい
感情移入してしまいます!!ご注意下さい。
 
ゴールしたー!やったー!で終わらない。
よくストーリーも無しに、こんなにもドラマがあったなー。
 
団長 安田 氏 Dancho Yasuda 安田大サーカス/漫才師
 


映画を通して彼女のメッセージに何度も触れた。
 
パートナーに怒られ、泣いて、それでも走り続ける彼女に、私まで泣きたくなった。
ウィルとの出会いに、私まで救われた。映画を観ている間、何度も彼女に話しかけた。
他人とのコミュニケーションが苦手という彼女だが、映画を通して自分と重ね合わせ、
私は彼女のメッセージに何度も触れた。
映画は、彼女のコミュニケーション方法のひとつなのかもしれない。
 
日向 涼子 氏 Ryoko Hinata モデル・サイクリスト
 


他に類を見ない自分ドキュメンタリー。
 
テーマをしっかりと据えた作品。なのに、びっくりするほど準備不足の
日本縦断で、ハラハラドキドキの連続である。
監督の捨て身が生みだした、他に類を見ない自分ドキュメンタリーとでもいおうか。
こういう切り口があったんだ。
 
高千穂 遙 氏 Haruka Takachiho 作家
 


「ツール・ド・フランス」を上回る、極限の旅。
 
今村さんが走破した距離 3,824km。
これは、「地上で最も過酷なスポーツ」と形容される
世界最大の自転車ロードレース「ツール・ド・フランス」の
総距離を300km近くも上回る距離である。
「ツール・ド・フランス」を走るプロ選手たちは、
最強のチームメイト(1チーム9名)、最高のメカニック、
最高のマッサージャー、これら文字通り最高のサポートを
受けながらフランス全土を駆け抜ける。
一方の今村さんは、日に日に痩せていく
たった独りのパートナーと共に、喧嘩しながら、泣きながら、
パンクも自分で直しながら、極限の状態で日本列島を駆け抜けた。
今村さんが成し遂げたことが、どれだけ偉大なことであるかを
正確に伝える手段が、未だみつからない…
 
栗村 修 氏 Osamu Kurimura 「ツアー・オブ・ジャパン」大会ディレクター 
 


すったもんだが、懐かしくほろ苦く可愛らしく楽しい。
 
ああ、日本縦断ツーリング、行ってみたくなった。
本映画は“ありがちな流行り言葉”でいうと、
自転車による「自分探しの旅」だろう。
ただ今村さんには自分を探さなくてはならない理由がある。
もちろん「耳、聞こえません」
「コミュニケーション、苦手です」の、そこの部分だ。
そして、今村さんは旅のパートナーの堀田さんとともに、
それを乗りこえていったり乗りこえていかなかったりする。
そのすったもんだが、自転車車載のロードムービーとあわせて
懐かしくほろ苦く可愛らしく楽しい。
ラストに出てくるオーストラリア人ウィルさんがいい。
彼はどこか「神の国」のようなところから、
今村監督を救うために派遣されたのではないか。
背中に羽根が生えてないか、一度さがしてみるといい。
 
疋田 智 氏 Satoshi Hikita 自転車ツーキニスト
 


そのままの自分で地球上に立つ。
 
ふうむ〜、こりゃ確かに、人間が生きて行く為に不可欠である相互理解、
コミニケーションの映画でありますが、と同時に自己肯定感を持つことの
大切さを教えてくれるものでもありますね。
 
きき返す、謝る、失敗を認める、ごまかさない、
などどの作業も「自分」あってこそ出来るもの。
 
まず自分が理想の自分でもなく、ダメな自分でもなく、
そのままの自分で地球上に立つ、そんなエネルギーが潜んでいる映画です。
 
秦 万里子 氏 Mariko Hata 音楽家・即曲家
 


教育に携わる人に見て欲しい作品。
 
コミュニケーションとは技術よりも先に、
本当に伝えたい、知りたい、という気持ちである。
そんな当たり前のことに、はっとする。
 
ロードムービーという形式を活かし、
時間と距離と共に積み重なる出逢いと葛藤との中で、
気持ちからはじまる拙い挑戦が、言語も音声をも越える可能性を見せてくれる。
 
矢萩 邦彦 氏 Kunihiko Yahagi 株式会社スタディオアフタモード 代表取締役CEO
 


見終わった後、清々しい気持ちになった。
 
今村さんを支える哲さん、頭は坊主で細身の体型、
しかも冷静な論旨で説得する様子はどこか修行僧のよう。
彼のガンバリが映画のテーマである「コミュニケーション」を浮かび上がらせ、
今村さんの「聞こえないから話しに入れない」というためらいが伝わってくるのです。
ためらいという壁は、旅の終わりが近づいても残っています。
ところがこの映画、何かを持っています。
見終わった後、清々しい気持ちになりました。拍手も力が入りました。
コミュニケーションってそうなんだよな、
誰もためらうことから人が結ばれていくんだよな。
試写会場にいた哲さんに「よくがんばったね」と話すと、
「ハイ、最後までがんばりました」と強く手を握り返してきました。
 
吉井 勇 氏 Isamu Yoshii 雑誌編集者
 


自分ならどうしただろう?何度も考えさせられる作品。
 
この映画のテーマは、今村彩子という一人の人間。
「ろう者」や「映画監督」、「女性」といった側面は、
たしかに彼女の一部だけど、彼女を表す全てじゃない。
ある種の人たちとのコミュニケーションを面倒だと感じたり、遠慮がちになったり、
テキトーにやり過ごしたり…。そんな、誰にでもあることを
「これからも、このままでいいのかなぁ」と思った彼女が、
新しい一歩を踏み出そうと決心したひと夏のチャレンジ。
3,824kmの道のりで出逢ういろんな人たちとのコミュニケーションに触れながら、
何度となく「自分はどうだろう、自分だったらどうしただろう」と考えさせられました。
僕も新しいStart Lineに向かっているのかもしれません。
 
土井 佳彦 氏 Yoshihiko Doi NPO法人代表